山口一生 佐賀県太良町議会議員
一般質問 /

有明海と漁業のこれから——原因の見える化と、次世代への説明

実施:2025-03-10(令和7年3月議会)
種別:一般質問
テーマ:有明海の再生と漁業のこれから

要点3つ

有明海は水温上昇・栄養塩の減少・赤潮などの影響で厳しい状況が続き、町内のノリ養殖も大きく減っている。
原因は単一ではなく、諫早湾干拓、気候変動、陸域からの流入など複数要因が絡む前提で「見える化」と調査の重要性を確認した。
資源回復の取組や支援策はある一方、新規参入の壁や次世代への伝え方(教育・学びの設計)も含め、町としての向き合い方を問い直した。

背景(なぜ聞いたのか)

有明海は太良町の「なりわい」と「誇り」を支えてきた基盤です。
しかし近年、ノリの不作や不漁が続き、漁業経営は厳しさを増しています。

そこで今回は、精神論ではなく、まずは現状を整理した上で、

  • 何が起きているのか
  • 何が原因として考えられているのか(どこまで分かっていて、どこから分からないのか)
  • どんな回復策・支援策があり、次に何を積むべきか
    を、行政の言葉で確認するために質問しました。

質疑応答(要点)

※正式な議事録・会議録が公開されたら、そちらもあわせてご確認ください(URL追記予定)。

Q1. 現在の海況/漁業者数/ノリ養殖の現状は?

A(要旨)

  • 海況:気候変動に伴う水温上昇、少雨による栄養塩減少、赤潮の発生などで厳しい状況。
  • 漁業者数:港勢調査(令和5年)で、正組合員214名・経営体153件。
  • ノリ養殖:近年の不漁が続き、現在は5件まで減少。

Q2. 原因はどこまで分かっている?(諫早湾・温暖化・陸からの影響など)

A(要旨)

  • 諫早湾干拓の影響は「意見が分かれ」、範囲や程度の把握は簡単ではない。
  • 温暖化(高水温)や大雨の影響は、資源減少や生物多様性への影響要因として懸念。
  • ノリ酸処理等については、司法判断の経緯も踏まえ「主要因とする科学的根拠が乏しい」趣旨の整理が示された。
  • 町としても国等に対して、状況把握・調査の重要性を伝えている。

Q3. いま行われている支援策/資源回復の取組は?

A(要旨)

  • 漁業継続対策として、ノリ養殖資材への補助(一定割合)や、漁網購入への補助(上限あり)などを実施。
  • 漁港内のしゅんせつ等で利便性向上も図っている。
  • 水産多面的機能発揮対策事業を活用し、海底耕運、カキ礁造成、沿岸清掃などの活動が行われている。
  • 資源管理の動きとして、産卵期に配慮した取組(例:一定期間の禁漁など)が紹介された。

Q4. 後継者・新規参入・教育(次世代)をどう考える?

A(要旨)

  • 40歳以下等への給付金制度で担い手支援を行っている。
  • 一方で、制度開始以降(令和元年度〜)新規参入は実績としては確認されていない。
  • ただし新規参入の相談自体は複数ある。
  • 教育面では、地球規模課題(温暖化等)も含めた学びの流れがあり、地域の課題を子どもたちにどう伝えるかも重要、という方向性が共有された。

一生の視点(解説と今後)

有明海の問題は、原因が単線ではなく「絡み合い」で起きている可能性が高い。だからこそ、結論を急がずに、

  • どこまで分かっていて、どこが不確かかを整理し続けること
  • 現場(太良の海)に即した調査・データ・対話の回路を太くすること
  • 次世代(子ども・若者)に、希望も含めて“説明できる言葉”にしていくこと
    が、行政にも議会にも求められていると感じています。

一次情報

  • 令和7年3月議会 一般質問(音声書き起こしテキストを基に編集)
  • ※議事録URL/動画URL/配布資料URLが公開されたら追記予定
▶ 全文(書き起こしテキスト)を読む

○議長(江口孝二君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 2番通告者、山口議員、質問を許可します。 ○5番(山口一生君) 議長の許可を得ましたので、通告に従い質問をさせていただきます。 今回の一般質問は、有明海の再生と漁業のこれからについてをテーマに質問をさせていただきます。 近年、有明海の海況は悪化の一途をたどっており、かつて宝の海と呼ばれた面影はなくなりつつあります。将来にわたり太良町の大切な要素である有明海と共生するために今何をできるのかを改めて考え、対策を実行する必要があるため、以下について問う。 1つ目、現在の有明海の海況はどのようになっているか。2つ目、現在漁業者は何名いるか。3つ目、ノリ養殖の現状はどのようになっているか。4つ目、漁業者に対する行政からの支援はどのように行っているか。5つ目、漁業の後継者育成支援はどのように行っているか。6つ目、漁業への新規参入はどれほどあるか。7つ目、水産資源の維持、管理、回復においてどのような活動がなされているか。8つ目、有明海再生加速化対策交付金の内容と本町における取組の検討状況はどのようになっているか。

  • 61 - 以上になります。よろしくお願いします。 ○町長(永淵孝幸君) 山口議員の有明海再生と漁業のこれからについてお答えします。 1番目の現在の有明海の海況はどのようになっているかについてでありますが、気候変動に伴う気温や水温の上昇、少雨による栄養塩の減少、令和7年1月には赤潮の発生も見られ、依然として漁業経営を取り巻く環境は厳しい状況となっております。 2番目の現在漁業者は何名いるかについてでありますが、令和5年の港勢調査によりますと、正組合員数は214名、経営体数は153件となっております。 3番目のノリ養殖の現状はどのようになっているのかについてでありますが、ノリの生育に必要な栄養塩が不足し、令和3年季から不漁が続いている状況であります。今年度の秋芽ノリ期では、一時栄養塩に恵まれた時期もありましたが、現在では冬場の少雨により栄養塩が不足し、ノリ養殖にとって厳しい環境下にあります。また、ノリ養殖をされている事業者数は、令和3年季で20件ありましたけれども、その後記録的な不漁の年が続き、現在では5件となっております。 4番目の漁業者に対する行政からの支援はどのように行っているのかについてでありますが、近年における有明海の海況変化による漁業不振に対して、町内漁業者を対象に太良町漁業継続対策補助金により、ノリ養殖資材に係る費用に対して50%以内の補助を行っており、漁網の購入経費に対しても上限1万円で補助を行っております。また、漁港内のしゅんせつを行い、航路確保並びに利便性の向上も図っております。 5番目の漁業の後継者育成支援はどのように行っているかについてでありますが、町内で漁業に従事する40歳以下の方に対し、太良町漁業従事者事業継続支援給付金により年間36万円を5年間給付し、支援を行っております。また、漁業に就いて5年以内の15歳から50歳未満の方に対しても、太良町親元就漁支援事業給付金により同額の支援を行っております。 6番目の漁業への新規参入はどれほどあるかについてでありますが、太良町親元就漁支援事業が始まった令和元年度以降、漁業への新規参入はありません。 7番目の水産資源の維持、管理、回復においてどのような活動がなされているかについてでありますが、水産多面的機能発揮対策事業を活用し、海底耕運やカキ礁の造成、沿岸清掃などの活動が行われております。 8番目の有明海再生加速化対策交付金の内容と本町における取組の検討状況はどのようになっているかについてでありますが、国の令和7年度当初予算での創設で進められており、農林水産大臣談話としては、漁場環境の改善や水産資源の確保の取組、漁業経営改善、新技術の導入などが柱となっているようでございます。したがいまして、本町における取組の検討はこれからということになります。 以上でございます。
  • 62 - ○5番(山口一生君) 質問への回答ありがとうございます。 有明海の状況が年々厳しくなっているというのは、皆さん御存じのとおりだとは思います。 本当にノリも今年非常に厳しい状態で、こちらに回答をいただいたとおり、最初は多少取れた時期もあったんですけれども、その後厳しい状態にまた逆戻りをして、今はほとんど取れていないという状況になっていますと。 それで、海の状況について聞いたときに、気候変動が原因であるとかそういうことが多々あるかと思うんですけれども、もう少し分解して有明海がなぜこういう状態になっているのかというのをかみ砕いていきたいなと思っています。そういったところの町の認識を聞きながら進めていきたいなと思っています。 1つ目が、諫早湾の干拓事業における諫早湾を閉め切った影響というのは、どのようなものがあるのでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 国営諫早湾干拓事業での潮受け堤防排水門閉め切りの影響についてでございますけれども、潮流の変化によりノリの不作、二枚貝不漁をもたらす赤潮や貧酸素水塊発生の一因などの意見や、また一方では、非常に特異な赤潮等の影響で諫早湾潮受け堤防の直接的な原因はないなど様々な意見がございまして、有明海への影響については確実な調査結果は出ていないと考えております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 諫早湾を閉め切った影響が本当にどこまで、どういった範囲でどれぐらいの影響があっているのかというのを計測するのは難しいということなんですけれども、諫早湾を閉め切ったことで、例えば干潟が消失をしているというのが言われています。それで、消失した干潟というのが、ずっといろんな環境の水質の浄化とかいろんな生物を産み育てるみたいなところもあったかと思うんですけれども、そういったところが閉め切って本当に影響が全くなかったというのは、多分国のほうも思ってはないと思います。その後、有明海の再生について多種多様な支援策とか対応策を行っているというような現状になっているかと思います。先ほど1つずつということで、まずその諫早湾を閉め切ったのが原因の一因じゃないかというのが1つ目。 それで、2つ目にお伺いしたいのが、温暖化による高水温や大雨とか、そういったところの影響というのはどういうふうに認識をされていますか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。
  • 63 - 近年の温暖化による高水温、並びに大雨の影響につきましては、漁場環境や沿岸域での水産資源の減少、並びに生物の多様性の損失などの影響の一因として懸念されております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 温暖化というので、皆さんも御存じのとおり体感されてると思うんですけど、夏は非常に暑くなって、40度に迫る真夏日というか、本当に暑い日があります。それで、7月の頭ぐらいから大雨も降ったりして、これまで考えられなかった量の水が海に流入するといったことも近年では、まれにあるということではなくて、もう常にそういう状態になってきていますということで、ここ10年、20年でそういった温暖化というか、暑くなって雨が大量に降るというような変化も有明海に影響をしているのではないかということが示唆をされています。 それで、次のポイントが、ノリ養殖における酸処理や施肥をやった場合に、こういった行動というのが海に対する影響というのはどのようなものがあるんでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) まず、この問題は、令和2年に福岡高裁によって有明海での不漁の原因が酸処理ではないかと問われた裁判があり、その判決の中で、酸処理が水質悪化の主要因とする科学的根拠は乏しく、赤潮の原因とも認めず、海洋汚染にも当たらないとの判決が下されております。そのような中で、施肥についても海に対する不漁の影響とも特定されてはおりません。 しかしながら、有明海再生に関する佐賀県計画では、環境に配慮した酸処理の基準として、水産庁次長通達及び県の実施基準に照らし合わせて、使用期間とか使用目的の制限等により使用量の削減に努め、施肥についても、漁場の栄養塩濃度が激減しノリの色落ちや生育の停滞が確認され生産に支障を来すおそれが生じた地区に限り限定的に実施をするということをされておりますので、この辺の原因も明確なことは分かっておりません。 以上です。 ○5番(山口一生君) 町長の答弁ありがとうございます。 裁判等でも、酸処理の影響であったり施肥の影響、そういったものについてよく分からな いというか、断定できないというのが正直なところかなというのがあるとは思います。しかしながら、もともと海に存在しなかったもので、何らかの影響を与える物質ではありますので、全く影響がゼロだと言われると、そうではないんじゃないかなと私は個人的には思います。その程度の問題というのがあって、近年では、今年とかでは酸処理や施肥等は過度には控えているというのが現状のようですけれども、やっぱり海はいろんな要素が複雑に絡み合っているので、何が決定的な要因なのかというのは非常に分かりづらいというのが、先ほどの町長にいただいた答弁の中でもあるのかなというふうに思っています。 次が、界面活性剤を含む洗剤などの影響というのはどういったものがあるんでしょうか。
  • 64 - ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 界面活性剤につきましては、洗剤などの日用品に多く使用されておるものになりますけれども、現在合併浄化槽などにより分解されるものと思われますので、環境への影響は少ないものになると思われております。 以上でございます。 ○町長(永淵孝幸君) ちょっと補足ですけれども、私も上京した折に水産庁とかに行ってお話をさせていただいておるのは、今有明海の状況がどうなっているのかということをよく知っていただきたいと。それを知る手だてとして、有明海に国の機関のそういった海洋を含めていろいろな有明海を調査するような機関を置いてもらえませんかという要望も実はしております。そういったことでしていかないと、本当の有明海の今のこの状況がどういうことになっているのかということは、我々素人でも分かりませんし、漁業者の方も多分100%はこれが原因だということは言えないでおられるんじゃないかなと思っておりますので、そういったことを含めて一つ一つクリアをしながら、今の有明海の状況がこうなんだということを知った上で対策あたりを講じてもらわないと、本当の有明海再生にはつながらないんじゃないかということを話しておるような状況です。 以上です。 ○5番(山口一生君) 町長、ありがとうございます。 上京された折に国の機関等々にもお話をされて、ぜひ太良町にそういった国の出先の機関を置いて、きちんとこの足元で調査をしてほしいというような要望をしていただいてることについて、私からも感謝を申し上げます。 そうやって、本当にここの現場で何が起きてるかというのを知らないままに、例えばお金、予算だけをつけましたとかそういったことを言われても、なかなか解決に結びつかない部分もあるのかなというふうに、私も同じ思いを持っております。 それで、先ほど界面活性剤のことについてお尋ねをして、今は合併浄化槽を使用している、その合併浄化槽によって界面活性剤の影響というのは限りなく少なくなっているんじゃないかというふうな見解を教えていただきました。実際、以前に比べたら垂れ流してるということはほとんどないかなとは思います。 それで、界面活性剤が入ってない洗剤というのはほとんど多分存在してなくて、我々が日常生活を一般的に送る上で界面活性剤を使っていない町民さんというのは、恐らく一人もいらっしゃらないんじゃないかなというふうに考えております。例えば洗剤、手を洗う、服を洗う、そういった汚れを落とすとなったら、確実に入っています。
  • 65 - それで、界面活性剤は、例えば水にぽんと落とすとどうなるかというと、魚が即死をします。もちろん貝とか生物が即死をする物質を使って我々は日常を便利に送らせていただいてるという、あんまり聞きたくないような事実だったかもしれないですけども、そういった物質ではあります。 では次に、広葉樹が減り針葉樹が増えたことで、海への影響はどのようなものがあるんでしょうか。こちらについてお答えください。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 一般的にですけれども、広葉樹の落ち葉による腐葉土が土壌の安定性を維持しやすいと考えられており、針葉樹が増えたことにより広葉樹より土砂が流出しやすく、河川を通じ海へ流入することで海岸の汚濁が進行する可能性があるという考えも1つありますけれども、ただし杉やヒノキなどの針葉樹の人工林は、適切な管理により水源涵養や土砂災害の防止などメリットも多々あるため、海に与える影響については一長一短あるものと思われております。 また、山林においてはそれぞれの役割がございまして、広葉樹を増加したほうがよいという考えが一概によいという考えのほうにはならないと考えております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 太良町は、杉、ヒノキ、針葉樹がかなりの量植えてあって、太良町はほかの場所に比べると非常に高精度な状態でかなりきちんと管理をされているというのが私の見立てというか、思いです。 それでも、きちんと管理をしてる太良町でも、これだけ杉、ヒノキをこの密度で植えれば、環境が変わらないかといったら、そうではないと思います。もともと雑木林というか、杉、ヒノキがある前は、例えば松が生えてたとかそういった状況から今のような山林の状態になっているかと思うんですけども、広葉樹がどんどん減って針葉樹に切り替わっていく中で、例えば水が湧き出ていたものが山肌から水が湧き出なくなったとか、川の水が減ったとか、そういったことというのは皆さんも体感としては恐らく覚えがあるんじゃないかなと思います。 それで、有明海のほうにも地下水の湧水というのが出ておりますので、そういったところから出てる水の量が減るとか、それが直接の原因かどうかは分からないですけれども、この何十年かで起こった変化を一個一個見ていくと、それも要因の一つではないかというのが考えられるということに行き当たるかと思います。 しかし、太良町は、山はすばらしく管理をされています。それでも、影響は多少はあるんじゃないかというのが私の考えであります。 次は、ネオニコチノイドを含む農薬の散布は、海へどのような影響があるんでしょうか。
  • 66 - ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 ネオニコチノイド系農薬につきましては、主に殺虫剤として使用をされております。農林水産省では、使用基準に従って使用すれば安全であると判断される農薬だけを、農薬取締法に基づき登録を行っていただいております。また、農薬につきましては、野外で使用するため、環境中に放出された農薬が魚などに悪影響を及ぼさないかどうかも同様に検討されておりますので、適切な使用を行えば環境に影響は少ないと考えております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 太良町は、農薬の使用もかなり多くあると思います。いろんな農産物がありますので、それを農薬なしで育てるというのは不可能だと思います。私も、虫が来たら一発でアウト、菌が来て病気が出たら一発でアウトというのが農業でありますので、農薬なしで農業をするというのは難しいと。 しかしながら、先ほどお伺いしたネオニコチノイドを含む農薬というのが、これは神経毒でありまして、もちろん虫は瞬間的に死にます。それで、もし河川等に流出した場合は、水生生物、魚とか貝とかは瞬時に死にます。それで、例えば人間に影響があるかというと、人間は瞬時には死なないかもしれないですけれども、影響がないというのは考えにくいというのが、私の考えであります。 これは神経毒ということで、例えば一説では発達障害や神経発達への影響があるんではないかということで、自然環境並びに人間に対する影響というのは無視できないということで、例えば日本では規制は特にされていないんですけれども、EU、ヨーロッパでは2013年以降、ネオニコチノイドの主要な3種、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムについて、屋外での使用が禁止されております。 禁止されてる国とかも実際あるということで、本当にこういった農薬等の使用が自然環境、ひいては海の環境、有明海の状況について全く関係がないかというと、そういうのもちょっと考えづらいかなということで、私がお伺いした次第です。 次が、砂防ダムを造ったことで海への影響はどのようなものがあるんでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 環境省のホームページでは、海と陸とのつながりを断ち切るような構造の砂防ダムにおいては、魚が遡上できないなどによって生き物にとってすみづらい環境になる影響はあると思われます。また、砂防ダムを上流に造れば、下流への砂の供給がなくなり、海岸が痩せていくなどを言われておりますけれども、砂防ダム群から海岸線までの距離が数キロ程度と近距離であれば、砂防ダムによる土砂供給の途絶は下流の海岸線にも影響すると考えられますが、
  • 67 - 現在のところ、海へ直接的に影響があることは明確には分かりません。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 砂防ダムを造った影響というのは定かではないと。確かに砂の供給等に影響はある可能性はあるということで、環境省も把握をしているということで理解をしました。 それで、実際砂防ダムを皆さん見たことがあると思うんですけれども、ほとんどが埋まってますよね。今、役割をそのままできてるかというと、ちょっと疑問が湧くんですけれども、災害の防止とか農業用水の供給とかそういった面でいうと、砂防ダムも例えば撤去をしてしまいましょうというのは、すぐには無理かなというのが個人的な考えでもあります。 次が、海産資源を再生産する速度を超えて取り過ぎた場合、生態系にどのような影響があるのでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 海産資源を再生産する速度を超えて取り過ぎた場合につきましては、一般的には、過剰な漁獲により特定の魚種が減少することで、その魚種の捕食や被食の関係にあるプランクトン等にも影響が広がり、生態系が乱れるおそれがあると考えられております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) これは平たく言うと、魚とか貝を取り過ぎるとどういう影響がありますかということなんですけれども、お答えいただいたとおり、子供が増える速度を超えて大人を取ってしまえば、もちろんその魚種とかその生物はこの世からいなくなるというのは、誰が考えても分かることだと思います。 そういうのもあって、先ほどからいろいろ聞いています。例えば、諫早湾を閉め切った影響がどうかとか、温暖化の影響とか、ノリの酸処理、施肥についてとか、界面活性剤、広葉樹を減らしたとか、ネオニコチノイドを含む農薬とか、砂防ダムを造ったとか、海から魚とか貝を取り過ぎたんじゃないかというような話をしてますけれども、この全てが恐らく有明海の今の状況をつくってるんじゃないかなと思っております。この一つを例えば改善したとしても、恐らく有明海が再生するというのは考えづらくて、この戦後70年ぐらいをかけて壊した、壊したというか機能がかなり低下した有明海を再生するには、恐らく70年ぐらいかけて元に戻すしかないのかなというふうに私は思っています。 それで、70年後のことについて、私は責任が取れないなというのがあります。私は今40歳ですけれども、私は70年後は110歳ですので、70年後、有明海の再生を見届けられるかというと、ちょっとそうではないかなというのがあります。 それで、有明海の再生について可能性があるとすれば、赤ちゃんを増やすしかないと、子
  • 68 - 供を増やすしかないと、人間もそうですよね。太良町は子供が減ってますけれども、子供を増やすしかないと。海もしかり、子供を増やすしかない、卵を産ませるしかない。その卵とか稚魚とか稚貝とかを大事に育成するしかないというのが、一番最初にやるべきことなのかなというふうに考えております。 ちなみに、コハダの産卵期における禁漁というのをやられてるということをニュースとか漁師さんからお伺いしたことがありまして、この効果というのはどういうところに出てきているんでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 現在、佐賀県有明海漁協大浦支所の組合員で構成されております投網業者会がコハダの産卵期と推定された2週間程度の期間に禁漁を実施されております。効果につきましては、禁漁前と比較して1時間当たりの漁獲量が増加傾向となっているため、目標となる漁獲量に達成する時間が短縮し、漁業者のライフ・ワーク・バランスの改善や燃料費の削減にもつながっていると聞いております。 以上でございます。 ○町長(永淵孝幸君) 関連ですけれど、竹崎カニについては、抱卵ガザミ。そのときは、漁業者も時期によっては休漁期を設けて取らないと。それから、いろいろな旅館組合等も、抱卵ガザミを一生懸命自分のうちで抱卵させながら、それを放流されていると。それで、町でも抱卵ガザミについての補助も出して取り組んでおります。 ですから、潮によっては取れる時期があるというようなお話も聞いておりますけれども、今のこの状況の中では取れる時期があったり取れない時期があったりというようなことで、全体的なことを通して考えれば、ガザミも少なくなってきているんじゃないかなということの話もお聞きします。 ですから、実は太良町では竹崎カニ、カキを一番メインに今観光の面でも売り出しているわけですけれども、そこが少なくなって取れなくなったときが本当にどうなるのかなという思いをしておりますので、そういった関係者の方たちの話も聞きながら、今後はこの辺の取組もしていく必要があるんじゃないかなという思いはいたしております。 しかし、今の状況の中で、皆さん方もこれが回答、これをやればいいですよということはまず考えがないようでございますので、いろいろなカニを扱っている関係者の方々と協議をしながら取り組んでいく必要があるのかなと思っております。 以上です。 ○5番(山口一生君) ありがとうございます。
  • 69 - 町長が言っていただいたのを次に聞こうかなと思ってたんですけれども、そのコハダの産卵期における禁漁というのは一定の効果が出てるんであろうというような見解があって、その活動に対して公的な機関から評価を受けているというようなニュースも見たりして。 漁師さんにとって、禁漁というのはなるだけ避けたいというのが多分正直なところなんじゃないかなと思います。海に出て漁をしなければ、収入がなくなるわけです。それを調整するというのはかなり難しい部分があるのかなとは思っています。しかしながら、そういった時期時期に応じて禁漁とかそういったものをみんなで協力して行うことによって、ある一定の資源の回復、魚の回復、貝の回復とかガザミの回復、そういったことが実際起きているんであろうというふうに考えております。 それで、先ほど言っていただいた竹崎カニの重要性というのは、太良町は例えばつきみんとガネッタみたいな2つのゆるキャラがいますけれども、ガネッタがキャラクターになるほど太良町の非常に重要なアイデンティティーの一つだと私も考えています。このカニとかが取れなくなってしまえば、本当に一大事だと言わざるを得ないと思います。 それで、町のほうからも今抱卵事業をやって支援していただいたりして、これについて卵を増やしたりすることについて前向きに支援をされていただいているかと思うんですけども、ちなみにこの抱卵事業はどのぐらいの額の支援をされているんでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。 令和5年度で実績を申し上げますと、91万9,200円補助をさせていただいております。事業費につきましては、131万3,190円となっております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) これだけ海産物が取れなくなってきている状況下において、100万円弱というのが妥当であるかというと、そうじゃないんじゃないですか、少な過ぎるんじゃないかなというのが私の個人的な思いです。 それで、ガザミ、カニにかかわらず、例えばカキとかほかの魚種とか貝とか水産の生物がいると思うんですけれども、そういったものを包括的に、例えば卵を産ませたり、ふ化させたり、ある程度大きくしたり、そういった一連の施設というか、そういった取組というのを太良町の中で、先ほど町長がおっしゃられたような国の機関と連携してやっていくことについて、もっと10倍ぐらいの予算をつけてもいいんじゃないかなというふうに考えているんですけれども、それについては、町長、どういうふうにお考えでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) まず、有明海は4県にまたがっているわけですね。太良町だけで竹崎カニを仮に育て上げたって、このカニは天草方面にも行くし、島原方面にも行くし、大牟田方面にも行くしというようなことで、ワタリガニとついてるような状況で行くと思うんですよ。
  • 70 - ですから、やるとすれば、太良町だけで幾ら予算をつけても、さっき言われた10倍の1,000万円以上もつけてやったって、それに対して太良町でどのくらいの水揚げができるのかというところも、私は分からないと思うんですよ。やるとすれば、この4県の漁協あたりで十分話合いをしながら、それで今の有明海再生に向けて、今度国も10年で100億円という話もされておりますけれども、どういう形になるかも分かりません。ですから、こういったところを含めて総体的に考えてもらわないと、太良町だけが抱卵ガザミとかいろいろなそういった事業で支援してやっても、本当に太良町だけにその恩恵がもたらされるのかという疑問もあるわけですね。 ですから、そこら辺はよく関係機関と、また漁業者さんあたりとも協議をしながらやっていかんと、助成金額も決められないと。だから、今の金額でもいろいろな要望もほかには出てきませんので、それでいいというふうなことで解釈されているのかなという思いはいたしております。 以上です。 ○5番(山口一生君) 確かに、海がつながってて、4県にまたがると。例えばここだけでしゃかりきに抱卵をしたとて、それが太良町の利益になるかどうかというのは定かではないというか、計りようがないということを言っていただいているんですけども、確かにそうかなということは思いますけれども、実際に太良町の中にはそのワタリガニを必要としている人が多分ほかの県よりも多いんじゃないかなというのを私は感じているわけです。 なので、例えばカニが取れた場合に誰が一番購入をしたいかといったら、恐らく太良町の方なんじゃないかなというのもありますので、そこは思い切って抱卵を10倍ぐらいにしてみて、それで結果どうなるかというのを見ていく必要もあるのかなと。 もちろん町の財源だけでは厳しい部分もありますので、国とか県とか財団とかいろんな財団がありますので、そういったところと連携をしながら、とにかく生物の量を増やしていく、生態系をもう少しましな状態にもっていくというのを今後考えていく必要があるんではないかなというふうに考えております。 それで、こういったすごく厳しい状態であって、先ほど新規で漁業へ参入をする方ってどれぐらいいらっしゃいますかというような質問をさせていただきました。それで、実際新規で漁業へ参入したい、例えば漁業権が欲しいとかというそういった御相談というのは、町には今あるんでしょうか。実際に新規参入した方はいないということなんですけども、そういった相談とかというのは今現在あっているんでしょうか。 ○農林水産課長(片山博文君) お答えいたします。
  • 71 - 漁業での新規参入の相談は数件ございました。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 漁業に参入をしたいというような相談が数件あっているということでお答えいただきました。 それで、今回私は第5次太良町総合計画とかこういったものを見ながら、町の政策として漁業がどういうふうな位置づけをされているかというのを見ていきました。 それで、こちらの67ページ、漁家数(経営体)の成果指標として、現在中間目標が2023年で177戸、それで目標が2027年で168戸ということで、漁師さんの経営体の数というのが、できれば2027年には168戸ぐらいは残っていてほしいということをこちらのほうに書いてあります。でも、先ほどノリの状況をお伺いしたときに、以前20戸程度あった経営体が5戸にまで減少をしているということで、マイナス15というような状態になっています。 それで、この目標を掲げられているこの戸数に何とか政策的にやっていこうと思ったときに、確実にこれは達成不可能なような気がするんですけれども、そこの点についてはいかがお考えでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) この新規参入については、いろいろ漁業をやられるその魚種と申しますか、そういったことで区分ができていってるんじゃないかなと思います。 それで、今のこの有明海の状況の中で、我々が計画をつくる。しかし、その計画に沿っていってないという部分は、確かにあろうかと思います。しかし、この新規参入について、町が独自で新規参入を促すということは不可能でございます。あくまでも漁業組合があり、漁業者のいろいろなやり方、そしてまた漁業区画権と申しますか、そういった問題も出てくると思います。 ですから、そういったところについては関係者との協議が十分必要だと考えておりますので、そこら辺を関係者が協議しながら、そしてそこを認めていただいてやっていくということであれば、行政としても支援できる分については支援していきたいと、このように考えておるところでございますので、この新規参入について、町があっせんするというか、取り組んで積極的に漁協に働きかけるというふうなことは、今のところは考えておりません。 以上です。 ○5番(山口一生君) その漁業権の問題は、その漁協の中で協議をしながら、お互い譲り合ったりいろんな物事を調整しながら進めていく非常に繊細な権利であるということは、私も理解をしております。 町長が先ほどおっしゃられたとおり、そこに例えば行政がどうですかというような話をすると、漁協の運営の状態とか漁業権の在り方、そういったものを行政が率先してゆがめてしま- 72 - うということになりかねないということを危惧されているのかなというふうに思っています。 しかしながら、私が個人的に思っている部分では、産業が太良町はなくなっていっておりますと。1次産業がありますけれども、農家の数も漁師の数も、例えば林業をやられてる方の数も減っている。そういった中で、こういった有明海の状況が非常に悪いと言われている、実際悪いという状況の海に新規に参入をして事業を立ち上げたいという若者がいれば、私はできればそういった方々のチャレンジというのは地域一丸となって応援すべきではないかなというふうに考えております。 漁業権の問題がありますけれども、町長にお伺いしたいのは、そういった若者が新たに事業に参入をしていく、そういった意気込みを応援すると、そういったお気持ちというのは、町長はいかがでしょうか。そこの部分についてのコメントをいただきたいんですけど、いかがでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) ちょっと反問をお願いします。 ○議長(江口孝二君) ただいまの反問権の行使の要求を許可します。 事務局はこれより残り時間を停止してください。 ○町長(永淵孝幸君) 私の反問というのは、どういった業種の若者が新規に参入したいと言っておられるのか。 そこら辺によって、さっき言いましたいろいろな問題がございますので、そこを行政が、いろいろな問題、いや、そがんとはよかけんが許可してやらんねというふうなことは、多分言えないと思うんですよ。農業と違いますよね。農業の場合は各土地の所有者があって行われますので問題ありませんけれども、有明海はいろいろな方がそういう利用してもいいといういろいろな条件があろうかと思います。その中で、1つの魚種を決めてやられるときは、先ほど言いました漁業部の区画権あたりも出てきますので、どういった方が言っておられるのか、そこを教えてください。 以上です。 ○5番(山口一生君) 私のほうに相談があったものに関して申し上げますと、2種類あります。 1つ目は、地元のカキを有明海で、太良町のこの海域で養殖をしたいというような相談でありました。その方は、今現在5年ぐらい漁師というかお手伝いをしながらカキの養殖の勉強をされているんですけれども、これまでとはちょっと違うやり方で養殖をしたいということで、いろんなやり方を試されてると。それで、私は実際どういうやり方でというのを聞いたんですけれども、そのやり方についてはここでは説明は差し控えますけれども、これまでやっていたようないかだでやる垂下式のものではないということだけ申し上げておきますけ- 73 - れども、特にその環境に影響が出るかというと、そこまでは考えにくいんじゃないかなと。 どちらかというと、昔からやっていたやり方を現代風にアレンジをしているというような印象を私は受けました。でも、そういった中で、新しいやり方とかそういったものについて、漁業権を獲得する、自分が養殖をできる区画を獲得するということについては、もちろん今までやっていた方の権利というのがありますので、そういったところで調整が今後引き続きされていくものなのかなというふうに考えています。1つ目は、新たなやり方による地元のカキの養殖についてです。 もう一つが、この辺の太良の海域で准組合員になって、自分でおかず取りをしたいというような方もいらっしゃいます。実際、今漁業権がない状態で、そこの辺の海岸沿いで貝を取ったりいろんな水産物を取ったりするというのが、太良町の中で長年行われてきたと思うんですよね。言ったら、石器時代とかから我々はやってることだと思うんですけれども、それが近年海の状態が芳しくなくなってきて、あんまり資源をむやみに取ってほしくないというような思いもあってか、それがやりづらくなっていますと。なので、准組合員になったら、そういった漁業権というか、資格を獲得すれば今までどおり自分の食べる範囲でそういったことが継続してやれるんではないかというような相談もあったりしてるんですけれども、漁協のほうでもいろんな見解がありまして、それがスムーズに認められるような状態ではないというふうに聞いてはいます。 もちろん、権利の問題ではありますので、外野がいろいろ言うのはかなり難しい部分もあるのはあります。私も、じゃあそうしてくださいとは言いにくいのはもちろんあるんですけれども、可能性として、今この最悪の状況で取れる選択肢を増やすということについては、私は何かしらの応援というか、そういったものが町としては、地域としてはあってもいいんじゃないかなということで、先ほどの漁業権の、新たに何かをしたいというような方を応援する気持ちについて町長にお伺いした次第であります。 以上です。 ○議長(江口孝二君) 反問に対する回答がなされました。 これでよろしいでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) 今言われたカキのことは、私も実は聞いております。 ですから、漁協の中でも、またカキの出荷者協議会とか振興協議会とかいろいろあります。その中で、私はその方の言っておられるのは悪いとは思いませんでした。やはり、地元のカキを育てていこうというやり方というのは非常にいいことかなと。しかし、私がそこでこれはいいことだからというふうなことで漁協を含めて関係者の方に認めなさいよと言う、そういう権利も持っておりません。ですから、そこが一番きつい点ですよね。ですから、私はそ- 74 - の方にも言いましたけれども、関係者で十分協議をしながら、そして了解をもらった上で取り組んでいくようにということもお話ししました。 それで、全体的にそこで一つ出たのが、例えば貝毒の検査あたりはどうでしょうかと尋ねられたもんですから、貝毒検査になればこれは全部の養殖業者さんにも影響しますので、それは当然町の方でも貝毒検査には積極的に取り組んでいきましょうというふうなこともやっておりますので、幾ら行政といえども、私も新規参入者が本当は必要だということは十分分かっております。しかし、そこを行政として後押しできるかということは、いろいろな問題があってできないということを申し上げているところでございますので。 以上です。 ○議長(江口孝二君) これで反問を終了いたします。 以上で反問権の行使を終了いたします。 これより一般質問を再開いたします。 事務局は残り時間の停止を解除してください。 ○5番(山口一生君) かなり深掘りしてコメントをいただいて、ありがとうございます。 町長が個人として言えることと行政の長として言えることというのが明らかに違いがあるというのは、私も重々承知をしております。でも、若者がチャレンジしたいという気持ちを応援したいというのは、声には出さずとも、胸の奥には持っていらっしゃるとは思いますので。 そういったところで、もう時間もありませんので次のことに行きたいんですが、海がこういった状況で、多分10年、20年でぽっと回復するというのは考えにくいのかなというふうに思っています。これだけ地球の環境が変わって、人間も文化的、文明的な生活をしてれば、環境に悪影響が出ないというのは、いろんな技術の革新を伴ってようやく達成できるのかなというふうに考えております。それで、こういった有明海の状況について、私は子供たちに説明をしなければいけないと思うんですよね。 私はこの件について一般質問の内容を考えてるときに、一番自分が避けたいことは何かというふうに考えてみました。私が個人として避けたいこと。私が個人として避けたいのは、私は今娘がいるんですけれども、例えば娘から子供がまた生まれて孫が万が一できたとします。その孫から、じいちゃん、何で有明海がこんなに悪くなったのに何もせんやったとって言われるとが非常に一番避けたいなと。何もせんやったわけじゃないよと言い訳はするんだけども、もし海況がこのまま悪化し続ければ、恐らく私は孫からそういうことを言われる立場になるでしょう、言われることになると思います。何でその時代の人は何もしなかったんですかと言われてしまうような気がしてるんですよね。我々が受け取ったときには、この有- 75 - 明海というのは機能していたんですよね。でも、それを誰かに、次の世代に渡すときに機能不全の状態で渡すというのがどうしても、いろんな状況が変化してるけれども、こういうことに取り組んだよということで、子供たちに早めから説明をしとかないといけないんじゃないかなというふうに思っています。 近年、SDGs、持続可能な環境をどうやって我々は実現するかという教育もやられてるというのを聞いております。子供に対するこういった有明海の状況についての教育については、教育長、いかがお考えでしょうか。 ○教育長(岡 陽子君) 議員の質問にお答えいたします。 今おっしゃっていただいたように、地球温暖化、それからコロナパンデミックなどの地球規模の課題、こういったものにどう対応するかということについては、文部科学省も考えて、その教育の流れというのを示しているところでございます。 それで、2020年度から順次実施されている新しい学習指導要領では、学校教育の役割として、子供たちが持続可能な社会の創り手となることができるようにするといったことが示されています。持続可能な社会の創り手というのはどういう人なのかといいますと、地球規模の課題を自分のこととして捉えて、その解決に向けて行動を起こす力を身につけるということであり、そういった教育が求められているというようなことが国としても示されています。 これらを受けて、現在全国の学校では、発達段階に応じてですけれども、持続可能な開発のための教育、そういったものが行われているところです。社会や理科、技術・家庭科、総合的な学習時間など、多くの教科でそういった内容が組み込まれております。 太良町においても、それを踏まえて実際既に授業は行われていますけれども、1つは教科で行うこと、もう一つは総合的学習の時間、そういったものを使ってやっています。それで、教科の取組の代表的なものを申し上げますと、小学校3、4年生の社会科では、身近な太良町や佐賀県のことを知って、それらについて考える学習を行っています。どのようなことかというと、地理的な環境や地域の産業と生活の様子、地域の様子の移り変わり、こういったことを学習しています。 それで、その学習をするためには、現在の太良町の様子というのが必要なわけですね。教科書にはそういったことは書かれてません、全国版ですから。それで、現在こういう副読本が作られていて、「私たちの郷土太良町」という副読本ですが、太良町はどういうふうに産業が行われてるだろうかという資料でございます。これがもう30年前に、昭和63年に作られたものでして、現在これの編さん作業をしているところでございます。令和7年度、新規の事業として、ふるさとに愛着と誇りを持つ児童・生徒育成事業の中で、この副読本を新たに作る予定でおります。予算計上もしておりますけれども、こういったものを通して、実際に子供たちが有明海などの地域の課題を知って、自分のこととして捉えること、そういうきっ- 76 - かけとなるような紙面作りを工夫して、使っていきたいと思っております。使うのは実際は令和8年度ぐらいからになりますが、こういったものをしっかりと先生方も読み込みながら、太良町がどうなっているのかということを伝えてまいりたいというふうに思っております。 それから、総合的学習の時間での取組は、町内の小・中学校では、発達段階に応じて太良町に関わる様々な学習を行っています。 小学校では、例えば3年生のテーマですね。「ゆたたりの里からの贈物」、「太良町のよかとこを伝えたい」とかそういったテーマを持って、太良ミカンや佐賀ノリなどの特産品についても、子供たち自身が調べてそのよさをPRする学習とか、生活と自然環境との関わりを考えたり、太良町のよさを受け継いでいく大切さを考える、そういった学習を小学校でも行っております。 中学校では、もう少し発達段階的に上になりますので、郷土の自然や産業、福祉、文化について探求する学習を実施しております。それで、目標は、問題の解決や探求活動に仲間と一緒になって主体的に取り組む態度を育てること、また社会の一員としての自覚を高め、社会で生き抜く人間力を育成するといった目標で進めているところでございます。議員御指摘の有明海の状況などについても、外部から講師を招いたり、また地元の人に話を聞いたりしながら、自分のこととして捉え、課題解決に向けて中学生なりの提案につなぐ工夫ができないかどうか、今後検討してまいりたいと思っております。 以上でございます。 ○5番(山口一生君) 教育長、ありがとうございます。 太良町のことを太良町の子供たちにしっかりと、よい面、悪い面と言ったら語弊があるかもしれませんが、今できていること、これからさらに取り組んでいかなければならないことというものを、そういう課題も含めて我々は子供たちに話をしていかないといけないタイミングに来ているのかなというふうに考えております。 先ほどおっしゃられた副読本も太良町独自のことといって、その出来上がりが今から楽しみなんですけれども、ぜひそういったものを携えて子供と大人が一緒になって環境について考えるというような場を持つ必要があるのかなとも思っています。 そういったいろんな年代で海の問題、環境問題について話をする場をホストするというのは行政でも、そういう部分こそ行政ができる部分なんじゃないかなというふうに考えていますけれども、それについては、町長、いかがでしょうか。 ○町長(永淵孝幸君) 環境を考える課と、それは幅広い環境問題があるわけですね。例えば有明海の問題だって、今みたいにいろんな複雑な因果関係があって、原因も分からないという状況にあるわけです よ。そういう専門の課というのは、うちはそういったところに精通した職員も今おりません、- 77 - この有明海に関しても。ですから、関係者のお話を聞きながら一緒になってこういう問題は解決していかんと、行政だけでいろいろ考えて言えるところじゃないんですよね、この環境問題というのは。ですから、そういった中で、いろいろな支援という方法はあるかも分かり ませんけれども、問題を考えるという課というのは、そういう課は今環境水道課という課がありますけれども、そこに環境係もおりますけれども、そこが専門的な職員でもないわけですので、そういったところまでできる課とか何かは考えておりません。 以上です。 ○5番(山口一生君) 課をつくるというのは大分先のことかもしれないですけれども、そういった話し合う場をその辺でつくっていただけると、ひとまずは何かしら物事が動くきっかけにもなるんじゃないかなというふうに考えています。何が原因かというのを特定するというのはもちろん大事なんですけれども、対立をしている場合ではないのかなというのも正直なところあって、協調して協力をし合う中で、その10年、20年、30年、50年にわたってこういった環境を改善していくというふうなカルチャーというか文化を、太良町は1次産業の町でもありますし、そういったものが我々の生活を支えてくれている、本当にベースになっていますので、そういったところを子供たちも含めて大人も正直に話をしていくタイミングに来ているんじゃないかなというふうに思います。 それで、実際有明海の状況はすごく悪くなっているというのはありますけれども、実際諫早湾の閉め切りに関しても、壮絶な反対運動があったというふうに聞き及んでいます。大浦漁協の方を中心に、たら漁協の方、みんなそんなものを造ってくれるなというふうに死ぬ気で反対運動をされたというような歴史がありますよね。そういったところもぜひ太良町の郷土を語る社会科の本に、ただ単にあの構造物がぽんとできたわけではなくて、本当にいろんな人がいろんな葛藤を乗り越えて今ここにいるということをきちんと子供たちに伝えていく必要があるかと思いますので、難しい問題ではありますけれども、引き続きいろんな協力体制をつくれるようにやっていければなというふうに考えております。 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。