6メートルの呼吸
有明海は、潮の干満差が日本一大きい海として知られています。
その差は最大で6メートル。
満潮時の穏やかな海面と、干潮時に現れる広大な干潟。
この劇的な変化は、目に見えない「月の引力」が地球の海水を引き寄せている証拠に他なりません。
太良町では、この地球規模の現象が、日々の風景として当たり前に繰り返されています。
劇場のような地形
なぜ、太良町が「月の引力が見える町」と呼ばれるのか。
それは海の状態だけでなく、この町の特異な地形が関係しています。
多良岳山系を頂点とし、有明海に向かってなだらかな扇状に広がるこの町は、いわば海を舞台とした「観客席」のような構造をしています。
町のほぼどこからでも海が見える。
つまり、生活のふとした瞬間に、月の引力の作用を目撃することになるのです。
「豊足(タライ)」と呼ばれた里
この土地の豊かさは、古くから記録に残されています。
『肥前風土記』には、景行天皇がこの地を行幸した際、こう述べたと記されています。
「食物ハ豊二足ヘリ。豊足(タライ)ノ村ト謂フベシ。」
(食べ物が豊かで足りている。ここは「豊足の村」と呼ぶべきだ)
この「豊足(ゆたたり)」という言葉が、現在の「太良(たら)」の由来となりました。
その名の通り、多良岳が育む水と、有明海の恵みは、現代にも受け継がれています。
竹崎カニ、カキ、海苔といった海の幸。
みかん、豚、わさびといった山の幸。
これらは単なる特産品ではなく、山と海が循環するこの地形が生み出した必然の結果と言えます。